株式会社ビクセンは 1949年創業の光学機器の卸販売業者から始まり、1966年からは天体望遠鏡の製造を手掛け、今や光学機器の専門メーカーとしての地位を確立している会社で、2019年に創業70年を迎える会社です。
その会社を8代目として継承し、時代に合わせ、未来を見つめる新妻和重は「星を見せる会社」という言葉を会社のビジョンとして掲げています。新妻和重の名言と共に描く未来を覗いて見ましょう。
新妻和重ってどんな人?
1966年に埼玉県に生まれました。
中央大学商学部会計学科卒業後、大学在学中からアルバイトをしていた会計事務所に資格取得後に入社し、そのまま20年勤務しました。
38歳になった時に、父親が経営していたビクセンから後継者になるよう依頼されます。
8代目社長就任
株式会社ビクセンは、埼玉県所沢市に本社を置く光学機器メーカーで、天体望遠鏡における日本国内市場占有率は60%で業界首位を誇ります。
世界市場においてもミード、セレストロンに次ぐ20%の市場占有率を確保していて、ドイツにもビクセンヨーロッパを2003年に設立しています。
その株式会社ビクセンの8代目代表取締役社長に就任したのは2008年の事です。後継者を引き受けたものの、最初の一年は会計事務所の仕事を引き継ぎながらの兼業でした。
正式に就任してから、まず最初に行ったのは、会計事務所での経験を活かして、売り上げの質を変える事と利益率の改善や、損益計算書などの経営基盤をまず変えて行きました。
自然科学応援企業
ビクセンは創業70年を迎える企業ですが、今後80年、100年と迎えられる保証はどこにもありません。それはどこの会社も同じです。
ものづくりもの仕事もどんどんと中国にシフトして行ってますから、製品のクオリティはもちろんの事、それプラス楽しさを添えた提案をして生き残りを図っています。
ましてや、光学機器のメーカーで天体望遠鏡を手掛ける会社においては、空をゆっくりと眺めたり興味を持つ人は年々減っている現代ですから、なにかしらの新しい手を打たないと事業は縮小の一途を辿ってしまいます。
うつむいてばかりいる現代人に、夜空の美しさに気づいてもらい、地球を含めて宇宙の存在を少しでも気に掛けてもらうこと、そしてこの星地球の自然を見てもらう事をミッションと掲げ「自然科学応援企業」としての役目を見つけます。
「宙(そら)ガール」のススメ
「おしゃれに楽しく宇宙を楽しむ」というコンセプトの元に、山ガールのような「宙ガール」になってもらうことで、購買層を広げる試みを行いました。
どうしても、今まではマニア向けの製品が多くマーケットが限られていました。
そこで、購買層を広げ「おしゃれ」にまで結びつけることによって、まったく今までの購買層とは違う、若い女性にまでターゲットを広げることに着目しました。
若い女性も参加しやすいイベントを全国各地で企画して自然と触れ合い、自然科学を身近に楽しむ人の輪を広げる取り組みをしています。
今では、星のアクセサリーも販売して若い女性から公表を得ています。
「星のソムリエR」
日本全国の大学などの天文部には、星が好きで優秀な技術のある方がたくさんいるのですが、その方達の活躍できる場所を作っていくことも、使命と考えました。
山形大学の登録商標で「星のソムリエR」という資格があるのですが、それを取得した方をビクセンのイベントスタッフとして活用するというプロジェクトも行っています。
ブランディングに力を入れる
新妻和重社長が就任した12年前の会社は、安定した利益の確保が出来ていなかったので、「火星大接近」などの話題になる天文現象があれば盛り上がるのですが、その後は低調気味になるという状況でした。
売り上げを伸ばし、安定させていかないと経営は成り立たなくなるのは、ビクセンに限ったことではありませんが、新しい手を打つのも大事ですが、過去の点検にも注視しました。
すると、「So-Ten-Ken」という星空情報を季節ごとに乗せたフリーペーパーを配布していたのですが、この内容のすごさに改めて着目して、さらに発展させて今では、愛読者もいるコンテンツに育ちました。
昭和40年代から発行していたのですが、あまりにも当たり前になりすぎて、誰もが見向きもしてませんでした。
また、昔はデパートの屋上で夜空の観望会などを開催していたのですが、ある時から止めていました。
でも、その頃を知っている方に話を聞くと観望会の後はデパートの売り上げが物凄く上がったと言うのです。そこで、そのイベントも復活させることに成功しました。
デパートでのイベントは交通の便が比較的良いので、家族連れでの参加が出来ると好評を得ています。
常に、社員一同で「星を見せる企業としての自然環境企業への活動」や「ビクセンらしいものづくりとは?」などを考えて、みんなでアイデアを出し合っています。
ですから新妻和重社長が言うには、
「私が経営者としてやるべきことは、数字を見て会社の状況を把握して、足りないものの強化を指示すれば良いだけです。ブランディングが足りなければ、増やすように指示して、あとは埋もれていてもったいないものを起こして復活させるとかです」
この言葉ひとつを聞いても、会社内の人それぞれがしっかりと役割分担されていて、その役割を果たせているのがわかります。
ビクセンはどんな人材教育をしているのでしょうか?
新妻和重の名言
新妻和重社長の名言から会社の人間の活かし方が分かります。
常に人を育てて活かすことに力を入れている新妻社長は、名言と言える言葉を発しています。それをいくつかご紹介しましょう。
・自分の役割を発見して行動を起こせることに価値を見ます。
ビクセンは、人材を募集する際にもこの点を重要としています。
まず、自分の役割は何かを考え、それを行動に移す。そしてそれが社会にとって価値があるのかどうかをひたすら考える。
それを定義にしていて、それを促進するために「役割面談」というものを行っています。
その面談では、まず役割を考えます。見つけられていなかったら周りの期待とも照らし合わせたりしながら一緒に考えます。
そこまでは一緒に考えます。でもその後は本人次第です。行動に移せない時は原因がなんなのかを一緒に客観的に考えることはしますが、行動に移すのは本人次第です。
・「コト」と「トキ」を提案し続ける企業を目指します
ビクセンは光学機器メーカーとして「モノ」を販売している企業です。
ですが、イベントそのものの企画販売をする「コト」や、また今しか見ることが出来ないというものの価値を「トキ」として付加価値をつけて提案して行きたいのです。
たとえば「日食」などは場所によって全然変わって来るので、今だけの星空を見るなどのイベント提案をして楽しんでいただくことで、ビジネスとしても持続可能な「自然科学応援企業」としての役割が果たせます。
・ビクセン流の「星の楽しみ方」をたくさん提案していくことによって、天体望遠鏡を覗く自分の姿を想像出来るまで引っ張っていく
今まで星空に興味が無かった人は、自分が天体望遠鏡を覗く姿なんて想像出来ないものです。
それをイベントに参加していただいて、星のすばらしさに触れていただき、実際に天体望遠鏡にも触れていただいたりしていくうちに、自分が天体望遠鏡を覗く姿を想像出来るようになります。
天体望遠鏡を覗くという行動は、「どうなっているんだろう?何が起こっているんだろう?」と自分なりに想像して、それを知りたいと思って見てみるという行動です。
想像力が豊かにり、やがて自分が天体望遠鏡を覗く姿を想像するようになります。それはその姿を望んでいるということです。そこに導くまでのきっかけとしてイベントなどのきっかけを提供しているのです。
・これからの宇宙は「眺めるもの」から「行くかも知れないところ」それを子供たちに伝える
以前は星空は眺めるものでしかありませんでした。でも、これからの時代は行くかも知れない所に変わりつつあります。子供たちの夢の広がりのお手伝いとしても提案して行きます。
・多様な価値観を認め、他者の価値観を共有する存在であること
自然界においては、身近な動物や植物、また宇宙の星にいたるまで、全て、異なる存在です。それは決して一つの常識では語れない世界であり、それぞれが他者を受け入れることで、可能性を広げな がら今日まで共存しているのです。
このような自然の在り方は、ビクセンが持つべきである重要なコアバリューそのものなのだと考えます。
ビクセンという会社で働く社員の一人一人が、それぞれ異なる存在ですが、それを互いに認め合う存在でなければならないのです。
自然科学応援企業である当社は、自然の本質である、多様な価値観を認める世界の中に、多くの可能性と大きな価値を生み出して行くのです。
ものづくりの日本の中小企業を牽引
ものづくりニッポンと言われ、日本の製造業とその精神性や歴史をよく話題にされますが、それはそこに焦点を当てないとすでに消えてしまいかねないほど、衰退が心配される世界でもあります。
製造業は、コストの関係で多くが海外に流れました。
技能継承の問題や製造設備の劣化など問題を抱え、存続を危ぶまれている中小企業も多く、今回取り上げたビクセンの様に創業70年を迎え、尚且つ存続していけるのは稀かも知れません。
時代を捉え、生き残りだけでなく、さらなる上を目指すには会社一丸となっての各々の役割を考える取り組みや、若い女性をターゲットに考えるなど、マニアの人だけでない購買層の広げ方なども、これからも注目していきたい企業です。
「天体ショー」など最近は天体観測も注目されていますし、これからは宇宙の時代ですからもしかすると大きな波がきて、その大きな波にのっていくかも知れませんね。
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