スルガ銀行と言えば、元は駿河銀行。日本の地方銀行ではありましたが、静岡県沼津市出身の岡野喜太郎が地元の農民の飢饉を救うべく、一緒に農業に励み、貯蓄組合共同社を設立したことを始まりとし、株価の最高値は2590円を付けた優良地方銀行でした。
岡野喜太郎氏は静岡の名誉市民であり、静岡屈指の実業家であり、勲三等瑞宝章も授与されており、62年間も駿河銀行の頭取を務めました。魂の銀行経営といえる名言も多いです。
大蔵省が銀行の合併を強権発動していく中で断固反対して合併を免れた数少ない銀行であったために、創業者である岡野喜太郎が尊敬されたのも理解できます。
ですが、その駿河銀行(現スルガ銀行)は2018年に発覚した不正融資事件を皮切りに創業者一族の一党支配が招いた数々の不祥事で窮地に陥りました。2019年の株価は445円前後となっています。
そして、創業者一族は退任となり2019年にはなんとか再起を図っています。
しかし、なぜ今時こんな不正がまかり通ると思ったのか、時代錯誤も甚だしいこのズレ感はなんなのでしょう。創業者岡野喜太郎の名言と、その後の後継者の顛末を紹介します。
岡野喜太郎の名言
地元の飢饉から農民を救うべく奮闘したスルガ銀行の創業者、岡野喜太郎の魂は素晴らしかった。
・この飢饉の最中にこの貧乏村が立ち直るには世間並みの努力では駄目だ。一層働き、一層の節約でなければ浮き上がれないと固く信じました。
・貯蓄は理論ではありません。克己と実行です。
貯金したお金は失うことがあったとしても、貯蓄の習慣と克己の心は一生失うことはありません。
・百歳まで生きようなどと考えたこともありません。ただ昨日から今日、今日から明日へと生きてきただけです。
・欲から離れることが長寿の妙薬なのです。
・貯金というものは、人を自立させて家を繁栄させ、国家を隆盛に導く早道なのだという信念を私は持っています。
・勤倹貯蓄をする人間は悪党にはなりません。これを徹底することで道徳も起こるはずです。修身の教科書が無くても難しいことを言わなくても世の中が明るくなるかもしれません。
・銀行家がとにかく注意しなければならないことは経費の節約である。
・困難に会うごとに、益々頭が冴え、益々強くなるのが私の性格である。
・私は、若い実業家が失敗して、駿河銀行に救済を求めてやってくると、親身になって再起の方法を一緒に考えて、貸した方が良いと思えば貸すし、貸さない方が良いと思えば貸さない。金を貸すばかりが銀行家では無い。これは私の60年以上に及ぶ頭取生活から得た尊い経験です。
スルガ銀行のヤバイ不祥事
1985年に地銀史上最年少の40歳で頭取の座に就いた岡野光喜は、スルガ銀行の創業家一族で喜太郎が初代頭取、父の喜一郎も頭取を務めています。
2016年に急逝した岡野光喜の弟の喜之助は副社長兼COOを務めていました。
岡野光喜氏が頭取に就任した当時は、法人への融資が頭打ちになっていたため、個人の住宅ローン融資にシフト転換して収益を大きく伸ばし、カリスマ経営とも言われていました。
ですが、これが社内で誰も文句を言えない存在になり、ワンマンとなって不正融資を許す形になっていったようです。
そもそもの不祥事発覚の発端は、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートディズの破産から始まりました。
スマートデイズは都内を中心に女性専用のシェアハウス「かぼちゃの馬車」を2012年より運営を始め、2013年の売上げは4億円だったのが2017年には300億円と急成長した不動産会社です。
高所得者をターゲットに「30年間家賃保証で利回り8%以上」を謳い文句にサブリース(家賃保証)契約を行い、部屋数1万室800棟をも管理していました。
このシェアハウスは、足立区や板橋区の比較的土地が安いところに多数建てられ、家賃も4万円台が多く安いというイメージです。
でも、実際はシャワー室やトイレが共同だったり、専用スペースが非常に狭いのです。
また普通シェアハウスというとリビングに皆が集まって団らんするのかと思ったら、リビングとかは一切ありません。
シェアハウスですから、ベッドや冷蔵庫などの生活に最低限必要なものは用意されていて、敷金・礼金それに仲介手数料が掛からないといった点は良いものの、割高の物件ばかりです。
田舎から家出してきたような女性ならばまだしも、普通の女子にはメリットが低かったのです。
なぜこんな間取りのシェアハウスを女性が気に入ると思って建てたのか不思議です。
だいたい「かぼちゃの馬車」って12時で魔法が解けて、ただのカボチャにもどっちゃうのに、ネーミングセンスもどうなのって首をかしげてしまいます。
ターゲットになった高所得者も、そこそこの社会常識はあったと思いますが。いつの世の中も「旨い話なんて無い」という言葉を知らない訳は無いはずです。
スルガ銀行が後押ししているというのが信用になったのでしょうか。時代錯誤も甚だしいといえます。
みんなコストパフォーマンスを重視しますし、気に入ったところに出来れば住みたいと思うものです。
気に入られなければ住んでもらえません。
それなのにサブリース(家賃保証)の契約ですから、オーナーは空室でも家賃が入ってきますが、当然スマートデイズはやがて行き詰ります。
そして、家賃保証の大幅な値引きに引き続き、家賃保証が完全に支払えなくなったのです。
当然、オーナーは住宅ローンの借り入れをしているスルガ銀行に返済できなくなり、大量の焦げ付きとなったわけです。
スマートディズ関連だけでもスルガ銀行は1000億円も融資していたのですから、株主が怒るのもごもっとも。
しかもスマートデイズは、融資審査の書類を改ざんして収入が多いかのように見せかけて融資を通るようにしていたようです。
これを普通銀行が見抜けない訳は無く、スルガ銀行と癒着していたとの見方が濃厚です。
他にも、同じような貸し付けが次々と出てきて、シェアハウス事業だけでも不正融資が2000億円にも膨らみ、問題が大きくなったのです。
この不正融資問題自体は、創業家一族が実際に指揮をして行われたことではないにしても、貸出金利が3.6%と高収益を継続させるには無理な営業、無理な契約があったことは言うまでもありません。
それに、創業家一族が建てた「迎賓館」とも呼ばれる別荘や、ベルナール・ビュフェ美術館をはじめクレマスチの丘と名付けられた丘に作られた数々の施設。
昔、一度は組合が「一族が利益を独占している。従業員に還元せよ」と猛反発したこともありましたが、一族は経営陣寄りの人間により労組を作り、反発する者を解雇して制圧したのでした。
そうやって一族への融資は1200億円にも上り問題視されたのですが、結局その返済も裏をかいくぐったのでした。
スルガ銀行はCSRという「企業の社会的責任」の活動を名目に、一族の建設した施設に寄付を継続的に行っています。
例えば、その寄付金を使って、一族の所有する土地を買い取ります。
売った側も一族ですから、売ったことで得たお金をスルガ銀行の返済に充てる訳です。
こんな公私混同の経営でも、特別背任としての刑事責任を受けることもなくやってきてしまったのです。
現在は有國三知男がスルガ銀行の社長に就任していて岡野光喜氏は引責辞任していますが、今後どのように処理が進むのか。
創業者岡野喜太郎の栄光と一族の挫折
岡野喜太郎の業績は確かに偉大でした。
でも、偉大な創業者の一族がその名声を汚す話というのは良くありますが、これもその一つなのかもしれません。
岡野光喜氏は、地方銀行で最年少の頭取として注目されたエリートです。
そして、個人向け住宅ローンで業績を上げたカリスマ経営者でした。
それなのに、周りの人間が岡野光喜氏が言う事にNOと言えず、わが身惜しさに忠言しなかったことが招いた悲劇かもしれません。
でも、創業者の時代から長く続いてきた習慣ではあったのです。
迎賓館のような別荘を建てたり、美術館を次々と建設して赤字になっても創業者の業績が偉大だったために許されてきたのでしょう。
創業者は銀行は経費の節約にもっとも注意しなさいと言っていたのに。
また、一族がわれもわれもと利益を貪る体質を「そんなやり方はいつまでも続く訳が無い」と考える人がいなかった時代錯誤の感覚といえるのではないでしょうか。
俯瞰して物事を見れなかったのでしょうか。
なんとも残念なことです。
もし、自分が偉大な創業者になったら後継者にどんな言葉を残せば、自分の残した功績を光輝いたまま残せるのか。
子孫のために何が出来るか、日本の未来のために何が出来るのかと考えてしまいますね。
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