ホテルや旅館それにレストランの予約サイト「一休.com」の榊淳氏は、今この時代に「ユーザーファースト」を掲げています。
昔は「お客様は神様です」という言葉がありました。
でも、その言葉が商売においての「お客様第一主義」と同じ扱いにされて、結果モンスタークレーマーを生み、土下座を強要するような頭の悪い消費者を作ってしまいました。
店側はその対抗策として「お客様は神様ではない」として、「出来ないことは出来ません」と告げ、訴訟も辞さないという言葉まで発するようになりました。
第三者の目線で言うとその「臨戦態勢」は興ざめなのです。
あんまり表立って主張されると、それが正しくてもちょっと引いてしまいます。
受動喫煙とかで飲食店の禁煙問題や、著作権問題で違法ダウンロードなどの音楽業界などなど。
美味しい体験がしたいだけなのにとか、スターを輩出するドリームメーカーなのにとかで見せられたくない面を見せられて興ざめ状態なのです。
そんな昨今に「一休」の榊淳氏は「ユーザーファースト」をなにより第一と掲げ、低迷していた業績を復活させました。
2015年にはTOBによりヤフーの傘下に入り、あらたな段階に突入しています。
一休の掲げる目的は「世の中に幸せな時間を増やすこと」「心に贅沢をさせよう」というものです。
榊淳氏の語る「サービス」の持つ力とはなんなのでしょうか?
一休の業績復活の裏にある戦略とはなんなのかを名言から読み解いてみました。
榊淳の名言
業績回復を達成させた榊淳氏の言葉には「なるほど」が沢山あります。
・サービスとは組織の混乱にも負けない程の、想像よりも強い力を持つ。
・データは真実を教えてくれるし、ユーザーは新たな気づきを与えてくれます。だから様々なデータを納得できる深さまで掘り下げ、小さい粒で特定してあげることが僕の役割なんです。
普通は、各部門が解析した数字を社長に報告するという流れですが、うちは逆。ぼくが原因を探したからそちらで対処してというわけ。
・世の中のために頑張れる仕事は最高。クライアントからもユーザーからも喜ばれるこんな綺麗なしごとなんてそうは無い。
・ユーザーファーストとは、個々のユーザーに適したサービスが大事です。
富裕層に日本酒一杯をサービスして感動は与えられるのか?そんなことを最後まで見極めることが大事。
・仮説だけでは辿り着かないお客様が受ける真実の実感は、直接お客様に聞いて確かめます。
一休.com榊淳の経歴
1972年熊本県植木町に生まれます。
子供時代はスイカの名産地なので、間引きされた未成熟のスイカが道に捨てられているのを拾って、友達と投げ合って遊ぶような毎日でした。
兄が神童と言われるような優秀な人でしたので、親からもあまり期待もされず、工業高校にでも行って野球でもしなさいと言われていました。
でも、兄の熊本大学の付属中学に入ったのがきっかけで自分も熊本市内の系列小学校へ転向しました。
でも、田舎生活と市内の生活では価値観がまるで違いカルチャーショック。
田舎ではガキ大将が幅を利かせてましたが、市内に来たら評価される領域があると別扱いされます。
榊淳氏は算数だけはとても得意でしたのでお蔭で居心地が良かったと語っています。
高校まではサッカーをやっていましたが、特にキャプテンになったとかはありません。
生徒会でも役職につくなどもしてませんから、人の上に立つよりも自分のやりたいことをやる方が好きだったのかも知れません。
大学院修了後の就職とスタンフォード大学
大学は慶応義塾大学の大学院理工学研究科を修了後、第一勧業銀行(現在のみずほ銀行)に入行しました。
ちょうど時期として、日本のメガバンクが複雑な計算ロジックを必要とするような部門で外銀に遅れをとっていたので、長年学んできたスキルが役立ったとして働いていました。
ニューヨーク支店に赴任していた時に、その当時劇的に進化をしていたコンピューターサイエンスを学びたいと、スタンフォード大学に入学します。
ニューヨーク支店の仲間達がシカゴ大学の経済学のPh.D.(博士号)を取っている人や、オックスフォード大学の物理学のPh.D.(博士号)を取っている人などばかり。
その仲間たちからの刺激を受けて、自分ももっと学ぶ必要性を感じます。
奨学金も貰えたので、銀行を辞めてスタンフォード大学で学ぶことにしました。
最先端のコンピューターサイエンスを学ぶうちに、ドリームワークス(ディズニーの制作部門のトップだったジェフリー・カッツェンバーグと映画監督のステーヴン・スピルバーグとレコード会社経営のデヴィツト・ゲフィンの3人で設立した映画会社)のような会社でグラフィックの仕事がしたいと考えました。
でも、アメリカにだけでもドリームワークスのような場所で働きたいという人は、とてもとても多いのです。
叶わぬ夢で終わりました。
コンサルティングの経験
そこで、将来の事を考えていた時にBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)と出合いました。
新しい事にチャレンジできそうな予感があり入社を決意します。
入社後丸二年は、ほとんど何も出来ないまま、結果主義の世界でしたからこのまま3年たったら出て行かなくてはならないと瀬戸際の時でした。
どんなに努力をしても上手くいかないと悩んでいたのですが、ある日会議でのクライアントへの提案で「それいいね」と褒められる経験をしました。
この成功を後でじっくりと分析した結果、「客の欲しがっている答を見抜いてそれに応える事」だと気づきます。
クライアントが解決したいと思っているものは何なのかを的確に捉え、それの答えを的確に出すことで評価されることを理解しました。
その後、入社当時からかわいがっていただいた森澤篤氏がBCGを辞めて、アリックスパートナーへ移ったのをきっかけに榊淳氏も後を追うように転職しました。
一休.com創業者 森正文との出会い
クライアントの望んでいることを見つけて提案して行くだけでなく、解決していくことにまで関わりたいと考えていた榊淳氏がアリックスパートナーから担当として任されたのが「一休.com」でした。
当時「一休.com」の創業者の森正文社長は、大きな転換期を前にして、なんと榊淳氏に全権を委ねます。
それは、勇気ある決断だったと言えますが、中途半端な権限では大きな転換は図れないと考えた結果の、あえて全権を委ねたのでしょう。
お蔭で、事業の取り組み方や組織の再編などにまで入り込むことが出来て、次第に数字となって結果で出てきました。
結果で出てくると、戸惑っていた社員もモチベーションが上がり業績も右肩上がりになります。
経営再編にあたっては従業員は現状維持のままでいきましたから、コストも掛からずに売上げを伸ばすことが出来たので大きな利益を出すことが出来ました。
この成功で、もっとこの会社に関わりたいと考えて、社員として「一休.com」に入社することになります。
全権を委ねてくれた社長の森正文氏や、ここまでの復活を共に果たしてきた社員の人たちともっと頑張りたかったのです。
入社後は宿泊事業の成長やレストラン事業などのマーケティングに関わりCOO(最高執行責任者)に就任。
2015年にTOBによりヤフーの傘下に入ることにより、ヤフーのCEOであった宮坂学氏からこれまでの実績を認めていただき、社長就任となりました。
一休.com榊淳のユーザーファースト
「一休.com」にとって直のお客様というと、ホテルや旅館またはレストランとなって、ユーザーとは直接の関わりがありません。
ですから、ホテルや旅館やレストランの要望ばかり聞いてしまうと、実際はユーザーファーストにならないこともあります。
でも一休は「ユーザーファースト」を最優先にいつも考えます。
その結果ユーザーが満足することによってお店も、一休の社員も、それに株主にとっても良い結果に結びつくからです。
だから常にユーザーが満足することがゴールとしているのです。
予算達成などというものは会社の問題、会社ファーストでは無いのですから、僕にとってはどうでも良い事と榊淳氏は語っています。
予算が達成しなかったとしたら「ユーザーファースト」の部分で足りないところがあってお客様の支持を得ていなかったと捉えます。
一休.com榊淳の語るサービスの力
「サービス」というものの持つ力は実はとても強いと榊淳氏は語ります。
店自体がお客様へのサービスという部分において、しっかりと考えられてどの従業員も同じサービスが出来れば、その店は大丈夫です。
ですが、その店の一人だけのサービスで集客できていたとすると、その人間が辞めてしまった途端にその店は潰れてしまったりします。
サービスは内容と質を店側がしっかりと考え、共有することで店の特徴となります。
サービスというものは、お客様がまたその店を利用するかどうかの大きな選択肢のひとつです。
サービスの力の大きさを榊淳氏は、コンサルタントの仕事をしている時に学びました。
どんなに繁盛していても、サービスの質が悪くなるといずれは客足も遠のいてしまうのです。
実は、繁盛した時こそ大事なのだといいます。
この繁盛を続けたい、更に伸ばしたいと思ったら「サービス」でお客様を引き付けてリピーターにすることがもっとも重要なのです。
一休.com榊淳のまとめ
もともとドリームワークスで働きたかったと言いますから、リーダーになるよりも、人を感動させたり喜ばせたい人のようですね。
榊淳氏の経歴を見ると、「一休.com」に留まらず、数字に強いしコンサルタントの経験もあるのですから「再起請負人」みたいになって、いろんな会社の立て直しをしていく人になるのかも知れません。
今はM&Aが流行っていてやたらと会社を買収していますが、買収した会社の業績を上げなければならないのが大きな課題になっていますから需要はあります。
以前は日産のカストロゴーン氏のように、海外から再起請負人のような人を雇っていましたが、今後は日本にも榊淳氏のように優秀な人が育って、企業を復活させることが出来るかも知れません。
また、榊淳氏は最近のデータサイエンス進化に伴った問題として、自分のインターネットに過剰なバイアスが掛かっているように感じていると語っています。
これはユーザーファーストの視点で見ると、まるで目隠しをされたようで、新しい発見がしずらくなっています。
利用者の情報や嗜好を勝手に汲み取って、好きそうな物で囲まれた状態を強制されることに、逆にストレスを感じている人も多いです。
この点はインターネットビジネスでは気を付けなければならない点で、利用者がストレスを感じない程度に提案をしていく方法の必要性は確かにあります。
ビジネス、仕事に限らずあらゆる面において、真の意味でのユーザーファーストの目線というのがとても大事だということですね。
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