堀場雅夫(ほりば まさお)は、株式会社堀場製作所の創業者です。
現在はHORIBAグループとして世界27ヶ国、49社を拠点に従業員数は世界で約8000名、分析や計測システムを提供している会社です。
従業員のことを「ホリバリアン」(HORIBARIAN)と呼び、同じファミリーとして結束を強めています。
社是は「おもしろおかしく」は創業者である堀場雅夫氏が唱えたものです。
人生のもっとも活動期である時期を費やす「仕事」に、プライドとチャレンジ精神を持って、精力的に取り組むことで、人生の満足度を高めて欲しいという願いが込められています。
「嫌ならやめろ!」というのも、嫌な事をやっていても決して成功はしないと知っているからです。
長い人生で、イヤイヤ仕事をしながら成功した人を見たことが無いから、と堀場雅夫氏は語っています。
「人生は一度きりなんだから楽しめ!」つまらない時間を積み重ねても、つまらない人生になるだけだと言っています。
元祖学生ベンチャー社長、堀場雅夫氏の名言と「おもしろおかしく」を大事にする訳を探ってみました。
堀場雅夫の生い立ち
1924年12月1日(大正13年)~2015年7月14日(平成27年)
京都帝国大学理学部教授の堀場信吉の長男として生まれます。
小学生の頃は体が弱く、小児リュウマチを患い静養していた時期もありました。
高校に入ってからラクビーを始めて、全国優勝するほど体力がついたようです。
1946年京都帝国大学理学部物理学専攻卒業。
物理学の中でも、原子核物理という分野で、そんなとこ卒業してもまず就職先は無い、と高校の物理学の先生に反対されました。
でも京都大学のその学科に好きな先生がいたので進学したのです。
1945年で終戦でしたが、学校の実験装置などはことごとく破壊されていました。
戦時中でさえ満足に出来なかった実験がさらに出来なくなったのです。
父親も研究者だったので、実験が好きなのは血が争えないといったところでしょう。
それで、実験も出来ないので学校に行ってもすることが無いし、家にいてもしょうがないので、何か好きな事をやろうと思ったと堀場雅夫氏は語っています。
堀場無線研究所設立
電気仕掛けが好きだから、電気や電子に関係することを仕事にしてとりあえず働こうと思って「堀場無線研究所」を立ち上げました。
核物理実験用の高速演算機(今でいうコンピュータ)に欠かせないコンデンサを自作してみたら、性能と品質の良さが評判となりました。
それで量産化に着手することになったのですが、折悪く朝鮮動乱による資材高騰で工場建設が頓挫してしまいます。
しょうがないので手元にあったpHメータを販売してみました。
このpHメータというのは、コンデンサの電解液のpH値コントロールをするために自作したものなのですが、その性能の良さから大変な好評を得ます。
それでいつしかpHメータの堀場として知られるようになったのです。
こうして、堀場無線研究所創業から8年後の1953年に、株式会社堀場製作所を設立して、計測機器メーカとして歩み出すことになりました。
その後、海外への進出も含めて企業は成長し、53歳で社長を退き、会長に就任。
その後もベンチャー企業への支援や育成に努めました。
2015年90歳で逝去されました。
堀場雅夫の名言
・「わしがこうして叱るのは、お前に期待しているからや。」
部下が理解し納得するにはどのように話すべきか何時間も時間を費やして考えます。その人間に期待して成長して欲しいから叱るのです。
期待していない人間には何も言いません。つまり叱ってもらえない人にはその会社での未来が無いということです。
・「ワンマンの社長の首を斬るのは自らしかいない。3年遅れた」
53歳で社長を退き会長に就任。
人生の能力・知力・経験・体力などは全部を掛け合わせて40代がピークであって、50代になると落ちてきてしまう。
堀場雅夫氏の述べる理想は40代で社長に就任して50歳で引退、役員も60歳で定年にすれば会社も日本ももっと元気になると語っています。
・「本当に嫌だと思うほどやってみて、それでも嫌ならやめろ!」
嫌々続けることほど無駄なことは無いが、本当に嫌なのかをきちんと見極めることが大事だ。
・「ベンチャーするなら、まず2千万円は資本金を積むべき。それが出来ない人は、自分の情熱や事業の将来性を支援者に伝えられない証拠。」
いま銀行は超低金利で、世の中にお金は余っていて銀行はお金を貸したがっています。
だから、情熱と綿密な事業計画があれば、2千万円ぐらいは集められるものです。
それもできない人は、商売にそもそも不向きだと思います。
なぜなら、それは「自分の情熱や事業の将来性を支援者に伝えられない」証拠だからです。
・「人生は一度きりなんだから楽しめ!」つまらない時間を積み重ねても、つまらない人生になるだけだ
・「嫌なことはやらない主義」なのに社長という仕事を続けられたのは、社長という仕事だからこそある、やっかいな問題を一つづつ解決する快感があるから。
嫌な事でもそれを越さないと、本来の好きな事を続けられないのなら、その嫌な事をおもしろくなるように努力すること。
・課題を解決することにおもしろさを発見すると、自分も会社も元気になる。
ベンチャー企業を応援
大企業は人材もノウハウも資金もあるのですが、真に新しいことには中々手を出せません。
だからイノベーションを起こせずにいます。
でも、ベンチャーなら思い切った新しい事が出来る。
ベンチャービジネスを生み出し続けられれば、日本経済全体の活性化につながると堀場雅夫氏は語っています。
京都市ベンチャー企業目利き委員会
堀場雅夫氏は「京都市ベンチャー企業目利き委員会」の委員長を務めるなどベンチャー企業に支援をしていますが、それは京都出身の企業という土地柄にも関係があるようです。
京都からは、京セラや日本電産それにオムロンやロームなど、数多くの世界企業が生まれています。
それは、京都には1200年あまりの軽工業の歴史があるからのようです。
京セラのファインセラミックスの技術のルーツは「清水焼」などの伝統的な陶磁器の技術から生まれていたりしていることなどでもわかります。
開発された技術の基盤となっていたものが、そもそもその土地に寝付いた軽工業の技術で、生活のためにその技術を生かして進化させていったという歴史なのです。
さらに京都の人は「人真似ね」が嫌いなのでオリジナリティーなオンリーワンな商品が生まれやすいという土地柄でもあります。
今までのベンチャー支援は間違っていた
今までの日本のベンチャー企業の支援のやり方は、まったくゼロの状態から新しい物を生み出すタイプのベンチャー企業を求めていました。
それがベンチャー企業とされていたのです。
でもそもそも日本はそういうタイプの、ゼロからまったく新しい物を作り出すという、そんな創造的なことには向いていないと堀場雅夫氏は語っています。
いわゆるゼロから新しい物を生み出すベンチャー企業を「シリコンバレー型」と呼び、アングロサクソン系のいわば「狩猟民族」が得意とするものです。
それに比べて日本人の遺伝子は「農耕民族」で、新しい情報に接したときに出る脳内のドーパミンの量が少ないのです。
アングロサクソン系の民族は、新しい情報に接した時にドーパミンの量が多量にでる人が50%もいるのに、日本人はわずか2%しかいないのだと堀場雅夫氏は語っています。
つまり、根っからの起業家のタイプ、いわゆるシリコンバレー型の人は2%しかいないのだということです。
ですから、日本人は「分離・独立型」のベンチャー企業が向いていると堀場雅夫氏は言うのです。
大企業の新規事業部門などから、分離・独立していくタイプのベンチャー企業が日本人には向いているし、そういうケースのほうが実際に多いのです。
これからのベンチャーキャピタルの在り方
ベンチャーキャピタル(VC)とはハイリターンを狙った積極的な投資を行う投資会社(投資ファンド)のことです。
今のほとんどのVCは、大企業がお金を運用するファンドになってしまっています。
ですから、ハイリターンばかりねらって成功の見込みの高い企業にばかり投資しています。
ですが、本当に資金を必要としているのはもっと生まれたばかりで、発達するのがまだ見えないような企業なのです。
ですからVCは企業のお金でなく、個人の投資家がもっと将来性を見込んで、投資をするようになっていかないと新しい物は伸びません。
個人の投資家が、「この会社おもしろそうだから投資してみよう」とならないと新規のベンチャーは育たないのです。
ベンチャー企業の成功のための三つの条件
堀場雅夫氏が語るベンチャー企業の成功の条件の一つ目は、「マーケット」。つまり市場です。
世の中が必要としているマーケットがあるのかです。
堀場雅夫氏は自分もそれで失敗したと語っているのですが、いくら自分でその技術に惚れ込んで素晴らしいと売ってみても、マーケットがなければ売れないと。
お客様は「この技術はすばらしいですね。でもうちではいりません」となるわけです。
必要としているお客様がいなければその商品はいくらどんなに素晴らしくても売れないというわけです。
第二の条件は「継続」です。
大きな花火を一つ上げて儲かったからといって、止めてしまってはいけません。
技術やサービスに磨きをかけて向上させ、更なるステップに繋げる気が無ければ成功とは言えません。
第三は「社会への貢献」です。
社会に役立つ事業を行う事で、CSR(企業の社会的責任)とは違います。
その会社で販売したものが、生活の向上に役立ったり、健康に役立ったりと何かしら社会の役に立つ事業をすることです。
たとえば、その商品は企業が利用するとコストが下がって利益の手助けになるというものでも、それが環境には悪い物だったりすると、そういう物はやがて支持されなくなるから成功しませんという意味です。
新興市場の停滞について
会社を起こすということは、金儲けだけが目的ではなく、社会貢献の意味も兼ねてますから、継続しなければなりません。
ですが、最近の新しい企業は、たったの3~4年でもうIPO(新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得させること)です。
堀場雅夫氏は、うちは17年掛かった、それでも早いと言われたと。
なぜそんな短期間でできるかは、国もベンチャー企業を推進していますし、VCの投資に力を入れている企業が多いからです。
ですから大抵、IPOに出ると一瞬株価は急騰します。
しかし、その後に利益率が半減したりする企業も最近は多いです。
また悪質な起業家の中にはIPOして急騰した自社株を売り逃げするような人もいます。
こんな株を買ったら投資家は泣くに泣けません。
起業する者の責任やモラル、それにVCも絡めて今一度考える必要があると、堀場雅夫氏は語っています。
今の状態が続くと、ベンチャー企業への投資をする投資家も減るでしょうし、日本の経済も更に低迷してしまいます。
堀場雅夫まとめ
大学で物理を学んでいたので、26歳まではなんでも分解・分析すればわかるものだと思っていました。
でも、その考えは間違っていることに気付きました。
たとえば一人の人間を分解して、その正確な成分で同じものを作っても、成分が同じというだけで同じ人にはならないからです。
それで、こんどは生物に興味が出てきて、医学博士号を取るために、生理学と医学を基礎から学びました。
そして、85歳になった時点でも、世の中はまだまだ分からないことだらけだと探求心に燃えていました。
年老いても興味の尽きないことがある人こそ、ほんとうに生きる価値のある「おもしろおかしく」の人生と言えそうですね。
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